多孔質に設えた公共空間が都市に提供できることとは
本計画は、大阪市に隣接する門真市における、大規模な駅前開発を含む土地区画整理事業の一部であり、同市の新たなランドマークとして位置づけられた図書館及び文化会館機能を備えた複合施設である。一帯は昭和30年代後半~ 40年代前半の高度経済成長期に、都市圏への流入人口の受け皿としてインフラが未整備のまま木造賃貸住宅が密集した経緯があり、都市構造の抜本的な改革が求められている。本施設は新たな整備区域の北東角部に位置し、道路を挟んだ向かいには低層住宅や寺院等が並ぶ。
このような都市更新の境界における公共施設の在り方として、透明なガラス・パッケージは既存環境との調和が困難であると考え、複雑で多様な体験を街からそのまま引き込んだ道の延長として計画することが適切であると考えた。建物の外周部には緑を配したテラス/縁側空間をらせん状に設け、人々の活動があふれ出す軒下空間や住宅地に対するバッファー空間、書架空間を日射から守る空間として機能するスパイラルガーデンを計画し、屋内ではそのスパイラルガーデンとは逆方向にらせん状動線を持つ吹抜け空間の周りに各種用途が混在するギャラリーウォークを配すという空間構成を提案した。
本施設には指定管理者としてカルチュア・コンビニエンス・クラブが計画段階より参画しており、書籍がテラスを含め館内全域において移動可能であるという前提が設計時より共有されていた。それによってスパイラルガーデンを単なるバルコニーではなく、動線として各部屋をラティス状につなぐネットワークとして機能させ、その自由度により都市や公共空間の余白として計画している。また屋内の各室は図と地を明確に区分することなく、グラデーションのある連続性を持たせることで屋内外をシームレスにつなげ、ギャラリーウォークを中心とした屋内空間とスパイラルガーデンが混然一体となった「多孔質な動線空間」を供している。
外観は直方体のヴォリュームからスパイラルガーデンの部分を穿った明快な構成となっている。残されたヴォリュームの部分に、厚みのあるパンチングメタル外装を用いることで、街との関係や室の開放性を「ゼロかイチか」ではないパラメトリックな操作として適切にコントロールした。同時に建物の全外周にスパイラルガーデンが巻き付く建物構成で、四方を道路や広場に囲まれた立地であることから、パンチングメタル背面に室外機や樋等を隠蔽することによって、メンテナンス性を担保しつつ、全方位に対し優劣の無い、開放的な立面を創出している。
透過性を持った外装に内包された動線空間は、駅前の新しい賑わいと旧来の営みをつなぐ、街の延長としての公共性を施設の中に実現しようとする試みである。それは周辺環境の変化に対して、開かれた〝窓〟をもつ多孔質な空間性により施設自体が順応していくような、都市の寛容さを建築で表現することであり、変わりゆく街や人と建築の関わり方へのひとつの回答である。
・門真市Website「生涯学習複合施設整備等」