大多喜町庁舎プロポーザル

現存する大多喜町役場庁舎(以下、既存棟という)は、今井兼次設計の建物であり、昭和34年に竣工しその年の日本建築学会作品賞を受賞している。また、平成20年にはDOCOMOMO・JAPANによる選定建築物となっている。
この建物は、RC造の純ラーメン形式であり、敷地の高低差を最大限に活かして建物のヴォリュームを2層と低く抑えており、水平性のある力強い空間を有している。しかし、実際に使用されて50年もの時間が経過していることから、構造クラック等の一部の破損や老朽化、設備機器の社会的な劣化、必要な機能の不足が著しい状況である。
このような経緯から、求められたプロポーザルの主旨は、既存棟のオーセンティシティに配慮した計画とし、既存棟の耐震改修、内外装の盛り替え、設備の更新、機能の不足分を新庁舎の増築で補うという内容であった。
私たちは、この新庁舎を大多喜城の「物見櫓」的な存在として位置付け、いつまでもまちのあらゆる情報を発信し続ける「アンテナ」であるような施設を提案した。新庁舎に求められる機能としては、城下町を中心とした観光拠点機能、町民参加によるまちづくり拠点機能、災害時の防災拠点機能、そして将来の市町村合併に対応するためのフレキシブル性が重要であると考えた。
また新庁舎は、既存棟が町の「アイデンティティ(identity)」であり、町にとっての「マスターピース(masterpiece)」であると考え、オーセンティシティに配慮した計画としている。
具体的な計画としては、フレキシブル性や可変性を配慮して、既存棟の整形グリッドを活かした正方形プランのワンルームで構成した。また既存棟の透けた印象を活かすために、既存棟の耐震壁と新庁舎の構造壁は、大多喜町が日本有数の竹林面積を有していることからも、竹細工をデザインモチーフとした格子状の繊細で軽い透明感のある構造デザインとしている。
このプロポーザルは、2月6日に第一次提案書を大多喜町に提出し、「準佳作入賞」として上位17者に選定された。

所在地
千葉県大多喜町
用途
公共施設